自社が稼いだ付加価値(限界利益)に対して、人件費(賃金、給与、賞与、役員報酬、法定福利費等)が
占める割合を「労働分配率」といいます。
人手不足等で賃上げの機運が高まる中、適切な労働分配率の管理はますます重要になっています。
人件費の原則は、「労働分配率をおさえながら1人当たりの人件費を高く」することです。
ただし人件費を増やしすぎれば赤字に転落するおそれもあるため、自社に合った適切な労働分配率・給与水準を
保つことは大切です。
従業員にとって納得感のある給与水準とするには、
①年収の時給換算で生産性アップ
②柔軟な勤務・給与体系の設定
③利益を公平に分配するルールづくり――といった具体策があります。
適切な労働分配率の管理とともに、原資となる限界利益を増やす取り組みも重要です。
年末調整事務は、従業員が提出した基礎控除申告書、扶養控除等申告書などの「年末調整申告書」に基づいて
行うため、従業員に記載上の注意点を事前によく説明しましょう。
本年中の従業員の親族の異動(結婚、出産、家族の就職、離婚、死別など)について確認し、訂正等があれば、
再度、扶養控除等申告書の提出を受けます。
配偶者控除等や扶養控除等を受ける従業員には、配偶者や子どもの収入(所得の見積額)の誤りや記載もれが
ないよう、よく確認するように注意喚起しましょう。
また、年末調整事務の電子化も検討してみましょう。電子化によって、給与事務担当者と従業員双方の
事務負担を減らし、会社全体の生産性を向上させることができます。
訪日観光客の対応や人手不足の解消が期待される外国人材の活用。
外国人(日本国籍を持たない人)には、入国の目的に応じて「在留資格」が与えられており、
その資格の範囲内でのみ、就労することが可能となっています。
また、中長期で日本に在留する外国人には、多くの場合「在留カード」が発行されています
。外国人材の採用時には、同カード表面の「在留資格」欄や「就労制限の有無」欄、「在留期間」欄を
必ず確認しましょう。
なお、外国人材に支払った給与等は国内源泉所得に該当し、所得税と住民税の課税対象になります。
住民税については、前年に給与所得がある場合、日本人従業員と同様に特別徴収(給与からの天引き)を
行うことになります。
未納があると、在留期間の更新申請等が許可されない場合があります。国籍を問わず、適正な納税が大事です。
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「山口雅文税理士事務所 事務所通信」を送らせていただきます。
最低賃金が全国平均1,000円台に引き上げられる中、「年収の壁」は、従業員はもちろん、
経営者にとっても大きな関心事の1つです。
所得税の課税対象となり、配偶者控除・扶養控除の対象外になる「103万円の壁」、社会保険の加入対象となる
「106万円の壁」、国民年金・国民健康保険の加入対象となる「130万円の壁」――。
これら3つの「年収の壁」についてよく知り、個々人に合った働き方を選べるようになれば、
従業員にとっては世帯年収のアップが、経営者にとっては人手不足解消が期待できます。
「年収の壁」にとらわれすぎない働き方を、従業員と一緒に検討してみましょう。
インボイス制度では、仕入税額控除を受けるためには、原則として一定事項を記載した帳簿と仕入先から
受け取ったインボイスの保存が必要です。
一方で、実務では、次のようなケースもありますので対応を確認しましょう。
○インボイスを発行できない免税事業者等からの課税仕入れであっても、
令和8年9月30日までは、消費税額の80%相当額について仕入税額控除が受けられます。
○従業員の通勤手当・旅費交通費等において、賃金規程等に基づいて従業員に支給する通勤手当、
出張旅費規程等に基づいて支給する出張旅費・宿泊費・日当は、一定事項を記載した帳簿のみの保存で
仕入税額控除が認められます。
○旅費交通費や備品購入等における従業員の立替払いの精算については、原則として
「会社宛てのインボイス」が必要です。
「従業員宛てのインボイス」の場合は、従業員が作成した「立替金精算書」等も合わせて保存することが
求められます。
贈与税の課税方法の1つである「暦年課税制度」は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された
財産の合計額から、基礎控除額110万円を差し引いた価格に課税されるものです。直系尊属(父母や祖父等)から
18歳以上の子や孫等への贈与は、一般の贈与よりも税率が軽減されています。
同制度では、相続等によって財産を取得した人が被相続人の死亡の日からさかのぼって3年の間に取得した
財産について、相続税の課税価格に加算されます(相続前贈与の加算)。
令和6年1月1日以後の贈与から、この加算期間が3年から7年に延長されます。加算期間の延長によって
相続時に課税される相続財産が増加するため、相続時の税負担が大きくなることが見込まれます。
同制度の活用は早めに検討しましょう。
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売上代金の決済時に、取引先(買手)が振込手数料相当額を差し引いた金額を振り込むことがあります。
この場合の振込手数料相当額について、売手は「雑費」か「売上値引き」として処理することが一般的です。
しかし、インボイス制度開始後に「雑費」として処理すると、原則として金融機関等からインボイスを
受け取る必要があり、事務負担が増えることになります。
一方、「売上値引き」として処理すると、税込金額1万円未満の売上に係る対価の返還等については
返還インボイスの発行が免除されるため、事務負担が軽減されます。
また、会計上は「雑費」として処理し、消費税法上は「売上値引き」として処理することも認められます。
この場合、振込手数料相当額について売上のマイナス処理を行わずに返還インボイスの発行が免除されます。
令和5年12月31日、電子帳簿保存法による電子取引データの保存についての「宥恕措置」が終了します。
現在は、電子メール等で送受信した請求書や見積書等の電子取引データ(PDF等)をプリントアウトして保存し、
税務調査等で提示・提出できるようにしていれば問題ありませんが、令和6年1月1日からは紙による保存は
認められず、電子データによる保存が義務付けられることとなります。
原則として全ての法人・個人事業者が適用対象です。
この制度改正を大きな機会として、紙で受け取った書類も全てスキャンして電子で保存する体制へと大きく切り替え、
「経営データの電子化」に社内全体で取り組みましょう。
TKCの自計化システム「FXシリーズ」の「証憑保存機能」を利用すれば、
電子帳簿保存法の保存要件を満たして保存することができます。
また、スマートフォンで紙の領収書等の証憑を撮影して、電子データとして保存することも簡単です。
売上高の増減にかかわらず、会社の維持に必要となる「固定費」をどのように管理するかは、
経営者の腕の見せどころです。「人件費」や「地代家賃」、「水道光熱費」など、
まずは自社の費用の中で固定費になるものを洗い出し、
「何が・誰が管理可能なのか」「金額に見合った効果を得られているか」「稼働率を上げられないか」
という3つの視点から、固定費の変化を確認しましょう。
固定費には、自社の努力で短期的に管理可能(削減が可能)なものと、短期的には管理不能(削減が困難)
なものがあります。
また、社長だからこそ管理できるものと、部下社員でも管理可能なものとがあることにも留意しましょう。
固定費は限界利益を稼ぐための支出ともいえることから、改善について考える際は、
単純なコストカットではなく「かけた費用に見合う効果が得られているか」という視点も重要です。
生産性向上という観点から、自社の機械や設備等の稼働率を高めて有効活用する――
という視点も、固定費の管理には有効になります。
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令和5年10月1日のインボイス制度開始後、原則として、売手は買手からの求めに応じて、
インボイスを発行しなければなりません。
ただし、売手において課税資産の譲渡等(資産の引渡し、貸付け、役務の提供)が9月30日以前に行われた
取引については、請求書等の発行日が10月1日以後であっても、現行の請求書(区分記載請求書)で
問題はありません。
請求の締め日が20日など、月の末日でないケースでは、「9月分」と「10月分」に請求書を分けて
発行するなどの対応が必要になります。
制度開始前からインボイスを発行しても問題はないので、準備ができた時点でインボイスに
切り替えておくと良いでしょう。
経営において売上高と並んで重要な指標となるのが「限界利益」です。
資源高や円安の影響で原材料や燃料等の価格が上がっている状況では、利益の確保が難しくなりがちです。
「昨年より利益が出なくなった」と感じている場合、今一度限界利益がしっかり確保できているか確認する
必要があります。
限界利益をアップさせるには、「販売価格を上げる」「変動費を下げる」「商品の組み合わせを考える」
という3つの打ち手が挙げられます。
限界利益が増加すると、設備投資や従業員の給料、販売促進や新商品開発などに、より積極的に予算を
充てることができるようになります。
また、黒字経営のためには、必要となる固定費に目標とする経常利益を加えて、限界利益の目標を
設定することが重要です。
自社の状況を踏まえて、打ち手を検討してみましょう。
仕入、出荷、備品購入などでお世話になる、企業の活動を支える大切なパートナーであるトラックドライバー。
そのトラックドライバーに、2024年4月1日から時間外労働の上限規制(年960時間)が適用されます。
それにより輸送能力の不足が懸念されているのが、「物流の2024年問題」です。
物流業界では現在、輸送能力の維持・確保のために賃金水準の向上や労働時間の短縮など、
トラックドライバーの労働環境改善に向けた取り組みが検討されています。
その結果、輸送にかかる日数の増加や運賃の上昇など、荷主であるさまざまな事業者も影響を受けること
となります。
決して、物流業界だけの問題ではありません。
荷主側では、例えば、運賃の改定分を価格転嫁できるよう取引先と交渉する、自社で届けられるものは
直接届ける、といった対応策を検討する必要があるでしょう。
また、
①短納期または急な配達・集荷依頼など負担のかかる依頼を見直す
②自社の職場を改善して荷揃えや荷おろしを効率化する
――など、運送会社に対する協力体制を整えておくことも重要です。
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社長が最初に意識すべき「売上高」を、変動損益計算書で
毎月確認いただきましょう。
そのうえで、売上高が「増えた理由」「減った理由」を社長と一緒に探り、
社長のここ1か月の経営感覚と、実際の数字の変化をすり合わせることが
重要です。
その際、特に取引先別売上高を確認してみてください。
主要な取引先について、当月と前年同月の売上高を比較し、
「なぜ、この取引先からの売上高が上がっている/下がっているのか」、
その背景や要因を考えてみると、売上高を伸ばす大きなヒントになります。
基本的に、売上高は「販売単価×販売数量」で決まるため、売上高を
伸ばすには、販売単価を上げるか、販売数量を増やすか、そのいずれかが
必要です。
販売単価と販売数量、どちらを重視するのかを決めるのも大事な経営判断の
1つです。
社長と一緒に売上高のアップを目指しましょう。
受け取るインボイスの対応状況を確認しましょう
取引先から受け取る仕入インボイスについて、取引先の協力を得て、
登録番号やインボイスの様式を確認しておきましょう。
自社の経理処理に影響がある場合は、取引先と検討することも必要です。
インボイスを発行できない免税事業者等からの仕入については、
仕入税額控除ができなくなる分、消費税の納税額が増えることになります。
ただし、経過措置として、令和11年9月30日までは一定の割合を
仕入税額控除することが可能です。
免税事業者等である取引先に対して、適格請求書発行事業者への登録を
要請する際、要請に応じないことを理由に、価格引き下げや取引中止を
一方的に通告する、著しく低い価格を設定する――
などの行為は、独占禁止法や下請法等に抵触するおそれがあります。
「金融機関と接するのは苦手」という方もおられるのではないでしょうか。
金融機関と話をするときの重要なコミュニケーションツールが、
日々きちんとつけられた帳簿(仕訳)を基に作成された「決算書」です。
自社の健全な経営努力と正しい経理処理の賜物である決算書こそ、
金融機関と話をするための共通言語となります。
金融機関とのコミュニケーションにおいては、頻度も重要です。
自社の強みや長所を知ってもらうためにも、積極的かつ定期的に
自社の情報を提供・報告しましょう。自社を客観的な視点で見てくれる
金融機関との対話を通じて、事業上のアイデアや気づきが得られることも
あるからです。
業績の良し悪しにかかわらず、経営に関するデータを企業自ら開示する
ことは、融資の必要性等をいち早く金融機関に伝えることにもつながります。
そのため、決算書に加えて、まずは四半期から試算表を提供することを
目指しましょう。
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「山口雅文税理士事務所 事務所通信」を送らせていただきます。
見込んでいた儲けの額と、決算書や損益計算書上に表示される
「売上総利益額」の数字とに差がある――と感じたことはありませんか?
このような場合、変動損益計算書を利用することで、
頭の中でイメージしていた利益構造と実際の数字とを一致させることが
できます。
変動損益計算書は、すべての費用を売上高に伴って増減するか否かで
「変動費」と「固定費」とに分けて表示した損益計算書で、
売上の増減で限界利益がどれくらい変わるかが把握しやすくなる、などの
特長があります。
また、変動損益計算書は社長の意思決定の結果が表れる「社長の成績表」
ともいわれ、①自社の製品やサービスが顧客や市場に評価された結果
②儲けの範囲内で経費をどのように使ったか――が表示されます。
7月号から開始の全6回連載「黒字経営への道しるべ」では、
「いま、自社に何が起きているのか?」を読み取り、
次の打ち手を考えるために欠かせない変動損益計算書のポイントについて
解説していきます。
インボイス制度への対応はお済みでしょうか。制度開始を目前に
控えたいま、自社がインボイスとして発行する請求書等に記載事項の
モレがないかあらためて確認しましょう。
インボイス制度では、現在、使用している請求書等(区分記載請求書等)に、
①登録番号(「T」+13桁の数字)②適用税率③税率ごとに区分した
消費税額等――の記載が必要です。記載事項にモレがないかを
確認しましょう。
いわゆる「レシート類」の簡易インボイスには、
上記①および②③のいずれかの記載が必要になります。
インボイスに記載する氏名・名称等は、屋号や省略した名称でも
構いません。
ただし、電話番号を記載するなど、インボイスを発行する事業者が
特定できることが必要です。
なお、インボイスに記載する「税率ごとに区分した消費税額等」
について生じる1円未満の端数処理の方法(切上げ、切捨て、四捨五入)は、
事業者の任意で決めて構いません。
ただし、端数処理は1つのインボイスにつき、税率ごとに1回のみと
されています。
一定の要件を満たすことで、事業承継の際に贈与税・相続税の納税を
猶予する「特例事業承継税制」。同制度を利用するには、
令和6年3月31日までに「特例承継計画」を都道府県に提出して確認を受け、
令和9年12月31日までに自社株式の贈与や相続等を行う必要があります。
令和6年3月31日までに特例承継計画を都道府県へ提出していない場合には、
その後期限内に自社株式の贈与や相続等を行っても、特例事業承継税制を
利用することはできません。
そのため同税制を利用する可能性があれば、まずは特例承継計画を作成し、
早めに提出しましょう。
特例承継計画の作成・変更には、税理士等の認定経営革新等支援機関
による指導・助言を受けることが必要です。
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会社の資産と経営者個人の資産の区分が曖昧になりがちな中小企業では、
外部関係者からの信頼を高めるための第一歩として、
会社と経営者個人の資産を明確に区分・分離することが重要です。
そのための具体策としては、①経営者個人が所有する資産が会社の業務に
使われている場合、賃貸契約書を作成して会社から経営者へ適切な賃料等を
支払う②事業に使っている経営者個人の資産はできる限り会社所有とする――
などが挙げられます。
また、「経営の基本」である現金管理も、会社と経営者個人の資産を
区分するための重要な対応策となります。次のような対応が自社で
徹底できているか見直してみましょう。
〇小型の金庫やコインカウンター等を用いて、会社と個人の現金が混ざるのを防ぐ
〇現金出納帳と実際の現金の残高合わせを毎日行う
〇クレジットカードは会社用と個人のカードを分けて使う
〇立替金および経営者への仮払金や貸付金は、早めに精算する
経営者にとって、経営意思決定の大きな「拠りどころ」となるのが「
変動損益計算書」です。
変動損益計算書とは、売上高の増減で変化する費用を変動費に、
売上高にかかわらず発生する費用を固定費に分類して表示した損益計算書
のことです。
通常の損益計算書に比べ、変動損益計算書は売上が変わった時の
シミュレーションが簡単で、例えば「売上増に伴って新しく従業員を採用
した場合、利益がいくら変わるのか?」といった経営上の判断をする時に
役立ちます。
そして、変動損益計算書の大前提となるのが、正確な月次決算データです。
そのためには、①適時・正確な記帳②証憑の整理や仕訳入力等を自社で行う
「自計化」③請求書や経費精算の徹底管理――の3つのポイントを
押さえましょう。
月次決算を徹底し、変動損益計算書で自社の経営状態をタイムリーかつ正確に
把握することで、問題点等に迅速に対応できるようになります。
令和6年1月1日から、贈与税と相続税のルールが大きく変わります。
贈与税には2つの制度があり、1つは「暦年課税制度」、
もう1つは「相続時精算課税制度」です。
令和6年1月1日以降の各制度の改正内容は、次の通りです。
①暦年課税制度
〇相続開始前7年以内の贈与額を相続財産に加算して相続税を算出
(納付した贈与税額は差し引く。加算期間は順次延長)。
○延長した4年間(相続開始4~7年前)に受けた贈与のうち、
総額100万円までは相続財産に加算しない。
②相続時精算課税制度
○現行の暦年課税の基礎控除とは別途、110万円の基礎控除が創設。
〇贈与した土地・建物が災害により一定以上の被害を受けた場合、
相続時に評価額の再計算が可能。
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